- エスキスが上手くいかない。。そもそも基本手順ってどうやるの?
- 基本手順は習得できたけど、私のやり方は合っているのかな?
- やり方を再整理したい!
一級建築士設計製図試験において、多くの方を悩ませるのがエスキスです。何らかのモヤモヤを抱えて、この記事に辿り着いたのだと思います。
本記事では、そんな疑問にお答えすべく「エスキスの基本手順」をご紹介します。「基本手順の習得 / やり方のおさらい・再整理」にお役立てください。
- 30代一級建築士(26歳取得)
- ゼネコン建築職:年収800万
- 平均残業時間:約40時間/月
※本ページにはプロモーションが含まれます。
エスキスの手順
大前提として「実践すれば誰でもエスキスができるようになる」というような魔法の手順は存在しません。先人が築き上げた基本手順に個々の思考やエッセンス、課題別の工程を加えて自分なりのエスキスを構築することが大切です。
- 課題文読み取り
- 敷地図トレース
- 面積チェック
- 構造種別、階数チェック
- 設備チェック
- 屋外施設チェック
- 断面チェック
- 機能図
- ———————————
- スパン割り
- 要求室の階振り分け
- チビコマ(1/1,000)
- プランニング(1/400)
- ———————————
- 面積最終チェック
課題文読み取り
エスキスは課題文読み取りから始まります。敷地及び周辺条件や建築物の要求室、要求図書など、課題文には作図と記述(計画の要点等)に必要な情報が盛り込まれています。
気を付けるポイントは「読み間違い / 読み飛ばし」です。素晴らしい図面と計画の要点等を仕上げても、重大なミスに繋がる「読み間違い / 読み飛ばし」をしたら、全てが水の泡です。
課題文のマーキングは、こういったミスを防ぐ有効な手段です。ただし、何度も課題に取り組んでいると慣れて作業的になってしまうため、今一度ご自身のやり方を再確認してください。
自分には関係ないと思った方も再確認することを強くおすすめします。たったこれだけで、翌年に再チャレンジすることになった知人が何人もいます。
敷地図トレース
下書き用紙に敷地図をトレースします。課題文の敷地図を利用しても良いのですが、後々のことを考えると下書き用紙の一画に敷地図がある方が用紙切り替えの手間がなくなり効率が良いです。
「アプローチ」「駐車場 / 駐輪場」「屋上広場 / 屋外テラス」等は、後の工程でより詳細に検討しますが、接道や眺望をもとに簡単にイメージしておきましょう。
実際の建築計画ではあり得ませんが、一級建築士製図試験は植栽計画を問う試験ではないので、最終的にアプローチや避難上必要な経路等に影響がない配置でOKです。
面積チェック
確実に建築面積と延床面積をチェックします。
例えば、「52m×32m=1,664㎡」の敷地で建蔽率が70%の場合、「1,664㎡×0.7=1,164.8㎡」が建築面積の限度となります。
また、地上3階建てで床面積の合計が2,300㎡以上2,800㎡以下という条件とすると、「1,164.8㎡×3層=3,494.4㎡」となり、2,800㎡に対して694.4㎡オーバーしていることが分かります。
この段階で、建蔽率いっぱいの計画とすると床面積がNGになるため「吹き抜け / 階高条件のある大空間」で調整が必要そうだと想定できますね。
構造種別 / 階数チェック
構造種別 / 階数をチェックします。構造種別は、指定がない場合「耐久性 / 耐火性 / 建築計画の自由度」等からRC造とするのがセオリーです。
上記性能に加え、振動や騒音に配慮していることを計画の要点等に書くことも可能です。(大スパンにはPCaで対応可能)
階数は「地上3階建て / 基準階あり」の2種類が出題パターンで、課題用途で想定可能です。注意すべきは、地下1階に機械 / 電気室等がある場合です。1階平面図に地下1階の範囲、断面図に反映が必要となることが想定されます。
地下1階がある場合「階段での経路確保」「維持管理のためのドライエリア」等もお忘れなく。
設備チェック
設備をチェックします。「室内設置 / 屋上設置」どちらが必須条件なのか、どちらもOKなのか、面積に影響するため確実にチェックします。
その他「大空間の空調機械室 / 受変電設備や非常用発電設備 / 受水槽やポンプ室」等、出題される用途によって本試験前にある程度想定が可能なため、本番で焦らないよう確実に対策しておきましょう。
留意事項「設備機器の搬出及び更新に配慮した計画」の記載に関わらず、搬出及び更新に配慮した計画とするのが無難です。
屋外施設チェック
屋外施設をチェックします。
駐車場について「施設利用者用は何台分必要か / 車椅子使用者用は何台分必要か / 職員用は何台分必要か」など、縁空き設定に関わる条件を確認します。
駐輪場についても同様です。なお「隣地の駐車場 / 駐輪場を利用するため敷地内には設けない」とする課題もあるため注意が必要です。
また、屋上広場や屋外テラスが必要な場合は「階指定があるか / 隣接して設ける室があるか / 景観に配慮が必要なのか / 満足すべき直径があるのか」などの確認が必要です。
屋外テラスなどは○○㎡以上という条件がよくあります。「○○㎡以上 / ○○㎡程度」の違いは確実に抑えておきましょう。
断面チェック
断面をチェックします。ここで確認しておきたいのは「1階当たりの階高 / 吹き抜けの有無 / 高さ方向で条件のある室」の階振り分けイメージです。
例えば、エントランスホールに「1階から3階までの吹き抜け」を設けるといった条件、「天井高が6m以上必要な大空間」など、仮で良いのでイメージ図を作成します。
屋上広場や屋外テラスといった条件も備忘のために配置しておきましょう。
機能図
機能図を作成します。本工程は必ずしも行う必要はありませんが、条件整理に役立つため簡単に書き留めておきたいところです。
機能図とは「○部門 / △部門 / □部門」が条件としてあった場合、○部門と△部門は連続的に計画する必要があるが、□部門はそうではないといったような動線的なイメージ図です。
筆者が受験した「平成30年度 健康づくりのためのスポーツ施設」では、管理・共用部門と健康増進部門があり、券売機設置が条件で、有料・無料ゾーンの切り分けがポイントでした。
スパン割り
面積チェック・断面チェック時に確認した条件をもとに、スパン割りを決めます。最初はセオリー通り、42m(=7m×6スパン)×28m(=7m×4スパン)をベースに検討することおすすめします。
次に「吹き抜け / 階高条件のある大空間」で調整可能であれば、それで計画します。
それでもおさまらない場合は「部分または全体のスパン割り調整 / L型形状」等を検討して、延床面積をクリアします。
いびつな建物形状とするとプランニングの難易度が上がるため、止むを得ない状況でなければ整形なスパン割りとしてください。
大空間の床面積条件はスパン割り検討のヒントになります。例えば「約200㎡の多目的室」が要求室の場合、(7m×7m=)49㎡×4=196㎡と想像できます。
要求室の階振り分け
要求室をどの階に計画するのかを振り分けます。まず、階指定がある室、階高確保が必要な大空間の室、さらに同系統部門でグルーピングした室を振り分けます。
次に各階の面積バランスを確認します。廊下係数1.4を各階の合計面積に掛けます。算出された数値が、想定スパン割り1階当たりの面積に概ね近ければOKです。(少なくとも係数「1.2」は確保したいところです。)
仮に、想定スパン割り1階当たりの面積が1,000㎡だったとします。階振り分け後、1階:1,000㎡、2階:800㎡、3階:1,200㎡と算出された場合、3階から2階に200㎡移動させる必要があることが分かる訳です。
廊下係数とは「廊下 / トイレ / 倉庫」等を計画するための余白です。要求室で目一杯になったら、廊下等が取れませんよね。
チビコマ(1/1,000)
チビコマによるゾーニングです。チビコマとは、方眼紙の1マスを1スパンとして検討する方法で、配置検討を始める初手となります。エスキスは全工程が重要ですが筆者は特に重要な工程だと考えます。
階振り分けを行った室を「日照 / 通風 / 眺望 / アプローチ」等を考えながらゾーニングします。大空間やコア位置、ホールからのアクセスなど、あらゆる視点から検討を行います。
チビコマが不得意という人に見受けられるのが考え過ぎてしまうことです。チビコマのメリットは大まかなゾーニングにより、短時間で数種類のパターン出しができることです。
計画の破綻に初期段階で気付けるため有効なリスクヘッジとなります。ある程度検討が進んでから計画の破綻に気付いた場合、投げ出してはいけませんが状況はかなり劣勢です!
プランニング(1/400)
いよいよプランニングです。ここまでの検討の集大成とも言えます。チビコマで当たりを付けたゾーニングを詳細に検討します。
特に意識すべきは空間構成です。合否を分ける重要な要件であると断言できます。
例えば「室が整形か / ホールからシンプルに各室にアクセスできるか(言い替えると、むやみに長い廊下ができていないか)/ 廊下が真っ直ぐか / 部門分けが明確か」等、パッと見の印象が大きく変わります。
当時、筆者の資格学校講師が「合否判定者が何百何千という図面を全て精査するのは不可能なため「明らかに重大なミスがあるもの / 空間構成に違和感があるもの」は弾かれる」と言っていました。推測の域を出ませんが、あり得なくないと思います。
面積最終チェック
面積を最終チェックします。面積表が求められることがほとんどなので、建築面積や各階の床面積を算定式と共に明記します。
この工程は想定面積を再確認することが目的ですが、稀に算定を誤っていて面積NGが発覚する場合があります。そうならないために面積は都度シビアにチェックする癖を付けましょう。
面積を間違えた時、苦しい状況ですが「バルコニーやピロティ、吹き抜け」等で面積をクリアできる場合があります。
エスキスの書籍
書籍で整理するのもおすすめです。色々な手法を学んで、自分なりのエスキスを構築しましょう。
手法を詰め込みすぎると型がブレてしまうので、比較することをおすすめです。
関連記事リンク集
『建築キャリアアップ』はワークライフバランスを考える建築人のための情報サイトです。
建築系の「転職 / 資格」情報を発信しているので、宜しければ他の記事にも遊びに来てください。
まとめ
「実践すれば誰でもエスキスができるようになる」というような魔法の手順は存在しません。先人が築き上げた基本手順に個々の思考やエッセンスを加えて自分なりのエスキスを構築することが大切です。
エスキスの正解は無数にあります。合格を掴み取り、あなたのエスキスを正解に導いてください。
些細なことでも、本記事の情報がご覧いただいている方のお役に立ち、一級建築士設計製図試験の合格率を上げる一助になれば幸いです。応援しています。
コメント